『おもてなしの経営学』×『パラダイス鎖国』

アスキー新書1周年記念トーク&サイン会「『おもてなしの経営学』中島聡氏 ×『パラダイス鎖国』海部美知氏」に行ってきました。

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

海部さんは、本田技研スタンフォード大学MBA、NTT米国現地法人、携帯ベンチャーの経歴を持つ、シリコンバレー在住の「米国経営コンサルタント」です。
ブログ「Tech Mom from Silicon Valley」が有名です。
2005年の夏に「パラダイス鎖国」の記事を書いたところ、梅田望夫氏が持ち上げてくれて、このブログがメジャーになったとのことです。しばらくは、この話は自分の中では終わっていたところ、最近になって、池田信夫氏に取り上げられ、ものすごい反響になったとのことです。そして、アスキーさんからのオファーに繋がり、海部さん自身も本を書きたかったこともあり、ついに本を出すことになったとのことです。

パラダイス鎖国」の現状分析と問題提起、そして、この問題の現実解としての「ゆるやかな開国」と「自分のための軽やかなグローバル化」の提案が論理的に丁寧に書かれています。
言葉のコピー(付け方)も素晴らしく梅田望夫氏も巻末の解説文で絶賛しています。

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由 (アスキー新書)

中島さんは、高校時代から「月刊アスキー」にプログラムを寄稿するバリバリのプログラマーで、大学・大学院時代はアスキー・ラボラトリーズの一員としてプログラム開発や移植に携わり、NTTを経て、マイクロソフトでは、ウインドウズやインターネット・エクスプローラーの開発に携わっていたとのことです。現在はシアトル在住のソフトウェア会社「UIEvolution」のCEOです。
ブログ「Life is beautiful」が有名です。
中島さんもこのブログを4年程続けており、また、ビジネス誌に生まれ変わった「月刊アスキー」でコラム「ITビジネス蘊蓄」を連載しており、日本のギーク(技術者)にもビジネスを学ばせたいという想いと本は月刊誌と違って一定期間は無くならないという考えから、アスキー新書での書籍化のオファーを受けたとのことです。しかしながら、なかなか文字数が埋まらず、コラム、ブログ、3名の対談記事でやっと文字数を稼いだところ、小飼弾氏からは「冷蔵庫の残りもの」?と言われてしまったらしいです。

アップル社の躍進を例にした「ユーザー・エクスペリエンス」=「おもてなし」という差別化要因の考察、コラム「ITビジネス蘊蓄」、対談記事を掲載しています。対談記事は、「ニコニコ動画」「2ちゃんねる」の西村博之氏、元マイクロソフトの同僚?の古川亭氏、『ウェブ進化論』の梅田望夫氏と超豪華です。

さて、講演の内容は、シリコン・バレーで働く人たちやマイクロソフトの体制まで様々で、とても楽しいものでした。

変人は大事!
海部さんによると、中島さんは「プチ変人」らしく、そもそも「大成功者=変人」なので、皆でおだてるくらいがちょうど良く、変人を大事にする文化に変えたい。

米国の会社もいろいろ!
シリコン・バレーは「巨大なぬるま湯」で、グーグルは「リタイヤメントセンター」。噂の食堂は結構おいしい。
アップルはステーィーブ・ジョブスのマイクロ・マネージメントで、プロダクトさえ出来ればよいという会社。
マイクロソフトは、ビル・ゲイツの軍隊組織で、ビル・ゲイツの考えが分らない人は許されず、幹部はまさにビル・ゲイツのクローンという組織。

シリコン・バレーでは技術者が神!
シリコン・バレーでは、知識集約産業が主で、その中で技術者こそが「価値」を生み出しているので、当然「神」の扱いを受ける。しかも、彼らはビジネスのセンスも持ち合わせている。一方、日本では、製造業が主であるため、営業、製造、調達などに携わる人も多く、技術者の提供する価値が相対的に低い構造になっている。また、技術とビジネスの両方を分る人が少ない。
海部さん自身もシリコン・バレーで仕事をすると周りに技術者ばかりのため、理系出身であればよかったと後悔しているとのことです。

日本にいる人に一言!
大事なことは人のつながり。自分の本当の強みを作るべきだ。
そして、英語も大事! 世界の情報を理解するためにも、世界に情報を発信して認められるようになるには必須!

日本にもシリコンバレーの様なイノベーション・モデルがやってくるのか?
待ちの姿勢ではなく、自分たちが、やるかやらないかの問題!
諦めずに変えることを続けていくことが大事。トヨタもホンダもかつてはベンチャーだった。

今回の2冊を併せて読むことが、「日本を変える」ヒントを掴むのにとても効果的で、『おもてなしの経営学』で全体像を眺めて『パラダイス鎖国』で論理的に整理するという順番で読むと良いとのことでした。

私としては、この前後に『ウェブ時代 5つの定理』も読まれるとよいかと思います。
これら3冊を読むと本当に日本の将来を考えさせれます。

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!